『18歳のビッグバン』(著・小林春彦さん)拝読所感メモ(順不同、随時更新)

『18歳のビッグバン』(著・小林春彦、あけび書房 初版 2015.11)拝読所感メモ(順不同、随時更新)

ツイッターのフォローさんが紹介していた本。読んでとても良かった。)

著者、小林春彦さんは、大学受験を目指して予備校へ向かっていたある日、突然気分が悪くなり意識を失い病院に運ばれる。
(後に付いた診断名は、右中大脳動脈閉塞症・広範囲脳梗塞。原因は、先天性のプロティンS欠乏症に、ストレス等の種々の悪条件が重なったことによる脳血栓と判明)
緊急開頭手術で一命を取りとめるが、「高次脳機能障害」を発症。
たとえば、
人の顔が分からない(相貌失認)、よく知っているはずの人物に対しても人違いする、鏡で自分を見ても「誰?」という状態、
服装や髪形が違うと同一人物でも違うと思ってしまい、映画やドラマのストーリーを追えない。
左側が認識できない(半側空間無視)、上か下か右か左か分からない、左にあるものに気づかない、文字の読み書きに支障をきたす。
ほか、地誌失認、失音楽など、
外からは一見して健常者と区別がつかない上に、自分でも自分に何が起こっているのかわからない障害を抱えたときの混乱期、
そのような自分の状態を受容するまでの過程として、
プライドゆえに障害を隠して健常であるかのように振る舞ったり、他者からのイメージとのギャップに傷ついたり
しかし、東京大学先端科学技術研究センターの中邑賢龍先生と出会い、「やるべきことは、『治すこと』より『気づくこと』」と知り
障害のある学生を、最先端の技術で支援するプロジェクト「DO-IT JAPAN」のメンバーに選抜され、
大学入試センター試験の受験要項に対しても、特別措置制度にあてはまらないグレーゾーンの障害への支援を訴え続け
脳機能障害への試験措置を認めさせた。
「君の前には『いなかったことにされてきた』人が大勢いるんだよ。そして、君の背中にも、そんな人たちが大勢並んでいるんだ」(中邑氏)

そのような著者の軌跡を読ませてもらうと
「ああ、この本、障害の有無に限らず、万人に通じる大切なことを語りかけてくるなあ」と思った。
誰しも、何かができて何かができない。できていたことが、いつ、できなくなるか分からない。
自動改札は左利きの人に不便。これは分かりやすい例。だけど、くっきり線引きできない、カテゴライズしきれない、個々人の抱える事情があり
大多数の人たちに便利につくられているこの世の中で、こういうケースもある、こういう状況もあり得る、ということを発信する、
そして、できないことを説明して支援を求めることに抵抗をなくして行く活動は、万人の生き易さに繋がることだから
ありのままを可視化することが良きことだと思った。


※以下、初読感想ツイートまとめ(2015.11.18 @komisokabot2)

『18歳のビッグバン』読。メモ:(小林春彦)見た目では分からない脳障害、支援制度の対象として認知されないグレーゾーン、自身での受容も他者への状況説明も困難。弱者か強者か白か黒か等、明確に線引きできない一人一人、何ができ何ができないか違う。人の皆が何らかの点においてマイノリティ→

→「治すよりも気づく」。能力の限界は代替手段で補い、抱える困難を他に説明して配慮を得ることを「可能性」と呼ぶ筆者の、立派なヒーロー像ではないリアルな個人の辿った道程発信が、全ての人が持っている様々な不自由に目を向け配慮し合うことに通じるんだなと思った。(『18歳のビッグバン』)